18～20日の日程で外務省賓客として来日した国際原子力機関（IAEA）のグロッシ事務局長は、19日に東京電力福島第1原発事故の除染土を保管する福島県の中間貯蔵施設を初めて視察し、安全に保管されているという認識を示した。

グロッシ事務局長は、除染土の県外搬出について「法律が定める期限の2045年までに実現可能だと思うが、行政の一貫した取り組みや予算が必要だ」と指摘した。

環境省の職員から説明を受けたグロッシ事務局長は「IAEAの基準に合致すると確認できた。放射線量も低く、環境への露出もない」と評価した。その上で「今後の除染土の処理方法が、国際的に安全基準に則っているかを確認していく」と強調した。

・ALPS処理水の海洋放出に関する追加的モニタリング
午前9時30分頃から、グロッシー事務局長の統括の下、ALPS処理水の海洋放出に関するIAEAの枠組みの下での追加的モニタリングが実施された。東京電力福島第一原子力発電所近傍において、韓国、スイス及び中国の分析機関並びにグロッシー事務局長自身による海水の採水実施。

・除去土壌等の中間貯蔵施設の視察
午後12時30分頃から、グロッシー事務局長は、除去土壌の中間貯蔵施設を訪問し、福島県内で除染により発生した除去土壌等が貯蔵されている施設や、除去土壌の県外最終処分に向けて処分量を減らすための再生利用方法の一つである道路盛土の実証事業の様子を視察。

・東京電力福島第一原子力発電所の訪問
午後2時頃から、グロッシー事務局長は、東京電力福島第一原子力発電所内で、東京電力ホールディングスの小早川社長と会談し、双方は、ALPS処理水の海洋放出がこれまで安全に行われており、国際的な安全基準に基づくレビューが今後も継続されることを確認。

20日、グロッシ事務局長は石破首相し「東京電力柏崎刈羽原子力発電所の視察は、日本の原子力エネルギー政策を知る上で有意義だった」と述べ、日本の取り組みに協力する考えを示した。

国際原子力機関（IAEA）は、原子力の平和的利用の推進及び原子力の核兵器への転用防止のための保障措置の実施を任務として、1957年7月に設立された国際機関。加盟国は176か国（2023年1月現在）。


■　ラファエル・マリアーノ・グロッシー
85年アルゼンチン外務省入省、02年化学兵器禁止機関（OPCW）官房長、10年IAEA官房長、13年在ウィーン代表部アルゼンチン大使 、14年原子力供給グループ（NSG）議長、19年IAEA事務局長就任。