遠藤潔の活動報告

第十八代 遠藤宗家 遠藤潔

奥原正明 元農林水産事務次官

2025年04月09日
農林水産省の奥原正明元事務次官は、コメが極端な品薄状態に陥った昨夏を振り返り「ここで政府備蓄米の放出をしなかったことが、異常な価格高騰の原因になったことは間違いない」と述べ、静観を続けた政府の対応を批判した。政府が同日発表した夏まで毎月、備蓄米を放出する方針については「効果は多少ある」との見方を示した。

奥原正明元事務次官は「供給不足が予想された場合は迅速、円滑に備蓄米を放出する必要がある」と指摘した。コメの価格を安定させていくためには、需給の見通しを日常的に把握すべきであると主張した。政府は今後、夏までは毎月備蓄米を放出する方針で、4月下旬には10万トン、5月以降は状況を見て放出量を判断する予定である。

奥原元事務次官は放出方法に関し「流通の川下のスーパーや外食産業で、不足分が確実に供給される状態にすることが大事だ」と強調した。全国農業協同組合連合会(JA全農)など川上の大手集荷業者に売り渡す現在の運用は流通コストがかかることから「価格安定の効果がどれだけあるのか」と疑問を呈した。

日本農業における最大の問題は「終戦直後の農地解放による自営農化で1農家当りの農地面積が狭まったことに起因する」と指摘。「中小企業で進んでいるM&Aによる規模拡大の動きを、農家も取り入れるべきだ」と促した。

1993年にGATT ウルグアイ・ラウンドで農産物の輸入自由化が合意された時に、欧州各国は輸出に向けて自国農業の価格競争力を高める政策を打った。一方、日本は農家支援に留まり、農業生産性を引き上げる政策が十分ではなかった。


■ 奥原正明
79年東京大学法学部卒業、農林水産省入省、86年水産庁漁政部水産流通課課長補佐(総括)、89年外務省在ドイツ連邦共和国日本国大使館一等書記官、91年外務省在ドイツ日本国大使館一等書記官、07年農林水産省総合食料局食糧部長、09年水産庁漁政部長、10年農林水産省農林水産技術会議事務局長、農林水産省消費・安全局長、11年農林水産省経営局長、16年農林水産事務次官、18年農林水産省退官。19年公益社団法人日本農業法人協会顧問、株式会社オプティム経営諮問委員会エグゼクテイブアドバイザーなどを歴任。