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遠藤 潔
遠藤潔の活動報告
高橋和夫 放送大学名誉教授
2026年07月30日
イスラエル・米国による対イラン攻撃の開始から5カ月を迎え、国際政治学者の高橋和夫・放送大学名誉教授は、一時合意した停戦覚書が崩壊し戦闘が再開された中東情勢について「交戦する三者それぞれが、国内事情や戦略的権益から後に引けないジレンマを抱えている」と指摘した上で「長年の均衡は完全に破壊された。いかに新しい安定、すなわち『中東の再生』を構築できるかが焦点だ」と強調した。
関係国の動向について、米国は「13日連続の攻撃など軍事的圧力を強めたが、ミサイル備蓄の枯渇や戦線拡大を避けるため一時攻撃を停止。大統領の決断と軍の現場の戦略的ジレンマが浮き彫りだ」とした。イスラエルは「核開発能力への打撃に向け米国へ共同歩調を求め、安全保障上の危機感から一歩も譲らない」、イランは「ホルムズ海峡の支配権を巡り強硬姿勢を維持。地政学的リスクを盾に国際社会を揺さぶっている」と分析した。
また、シーレーン(海上交通路)の麻痺は日本経済の基盤を揺るがす「死活問題」になると強い懸念を表明した。政府や企業へ警戒レベルの引き上げを促し、次の4つのリスクを挙げた。
①原油急騰:中東依存度約9割の日本にとって、海峡の封鎖危機は原油指標の急騰を招く。国内のガソリン代や光熱費を直撃し、インフレ悪化と個人消費の冷え込みをもたらす。②物流寸断:紅海や海峡の安全が脅かされ、アフリカ・喜望峰迂回を余儀なくされる。航海日数が最長2週間長期化し、運賃跳ね上がりと輸出入の著しい停滞を招く。③スタグフレーション:コスト増が国内産業の利益を圧迫。価格転嫁の一方で景気悪化により賃上げが追いつかない「不況下のインフレ」に陥る危険が極めて高い。④市場動揺:投資家のリスク回避により日経平均株価の急落を招く。安全資産としての円買いなど、急激な為替乱高下が輸出企業の業績を不透明にする。
これに対し、日本政府が迅速に講じるべき具体的な政策対応として次の3点を提言した。
1.備蓄油の放出と多角化:完全封鎖を想定した国家備蓄油の機動的放出体制の整備と、中東一辺倒からの脱却に向けた代替エネルギー調達先の確保。2.海運・貿易企業への支援:迂回コストを強いられる業者に対し、航路の安全情報の迅速な共有や、関税・燃料補助金を通じた経済的支援の即座の具体化。3.独自の対話外交:伝統的なイランとの独自の外交関係を活用し、米イスラエルとの間を仲介する現実的なパイプとして機能させ、日本らしい外交カードを切ること。
高橋名誉教授は「中東の安定に経済の命運を握られている日本にとって、今回の戦闘再開は対岸の火事では決してない。これまでの楽観的な『前提』をすべて捨て去り、中東の激変を見据えた新しいエネルギー戦略、そして主体的な平和外交を今すぐ描き直さなければならない」と語り、政府や経済界に対し、現状を「有事」と捉えて危機管理を急ぐよう強く警鐘を鳴らした。
■ 高橋和夫
82年国際開発センター (IDCJ) 研究員、85年放送大学助教授(国際政治学担当)、93年ロンドン大学・東洋アフリカ研究学院(SOAS)客員研究員、08年放送大学教授、18年放送大学定年退職、18年放送大学名誉教授、18年一般社団法人先端技術安全保障研究所 (GIEST) 会長。
関係国の動向について、米国は「13日連続の攻撃など軍事的圧力を強めたが、ミサイル備蓄の枯渇や戦線拡大を避けるため一時攻撃を停止。大統領の決断と軍の現場の戦略的ジレンマが浮き彫りだ」とした。イスラエルは「核開発能力への打撃に向け米国へ共同歩調を求め、安全保障上の危機感から一歩も譲らない」、イランは「ホルムズ海峡の支配権を巡り強硬姿勢を維持。地政学的リスクを盾に国際社会を揺さぶっている」と分析した。
また、シーレーン(海上交通路)の麻痺は日本経済の基盤を揺るがす「死活問題」になると強い懸念を表明した。政府や企業へ警戒レベルの引き上げを促し、次の4つのリスクを挙げた。
①原油急騰:中東依存度約9割の日本にとって、海峡の封鎖危機は原油指標の急騰を招く。国内のガソリン代や光熱費を直撃し、インフレ悪化と個人消費の冷え込みをもたらす。②物流寸断:紅海や海峡の安全が脅かされ、アフリカ・喜望峰迂回を余儀なくされる。航海日数が最長2週間長期化し、運賃跳ね上がりと輸出入の著しい停滞を招く。③スタグフレーション:コスト増が国内産業の利益を圧迫。価格転嫁の一方で景気悪化により賃上げが追いつかない「不況下のインフレ」に陥る危険が極めて高い。④市場動揺:投資家のリスク回避により日経平均株価の急落を招く。安全資産としての円買いなど、急激な為替乱高下が輸出企業の業績を不透明にする。
これに対し、日本政府が迅速に講じるべき具体的な政策対応として次の3点を提言した。
1.備蓄油の放出と多角化:完全封鎖を想定した国家備蓄油の機動的放出体制の整備と、中東一辺倒からの脱却に向けた代替エネルギー調達先の確保。2.海運・貿易企業への支援:迂回コストを強いられる業者に対し、航路の安全情報の迅速な共有や、関税・燃料補助金を通じた経済的支援の即座の具体化。3.独自の対話外交:伝統的なイランとの独自の外交関係を活用し、米イスラエルとの間を仲介する現実的なパイプとして機能させ、日本らしい外交カードを切ること。
高橋名誉教授は「中東の安定に経済の命運を握られている日本にとって、今回の戦闘再開は対岸の火事では決してない。これまでの楽観的な『前提』をすべて捨て去り、中東の激変を見据えた新しいエネルギー戦略、そして主体的な平和外交を今すぐ描き直さなければならない」と語り、政府や経済界に対し、現状を「有事」と捉えて危機管理を急ぐよう強く警鐘を鳴らした。
■ 高橋和夫
82年国際開発センター (IDCJ) 研究員、85年放送大学助教授(国際政治学担当)、93年ロンドン大学・東洋アフリカ研究学院(SOAS)客員研究員、08年放送大学教授、18年放送大学定年退職、18年放送大学名誉教授、18年一般社団法人先端技術安全保障研究所 (GIEST) 会長。