遠藤潔の活動報告

第十八代 遠藤宗家 遠藤潔

アントニオ・グテーレス 国連事務総長

2019年05月22日
個々の生物種から全生態系に至るまで、生物多様性は人間の健康と福祉に欠かせません。私たちが飲む水、私たちが食べる食料、そして私たちが吸い込む空気の質はすべて、自然界を健全に保つことに依存しています。私たちが持続可能な開発目標(SDGs)を達成し、気候変動に取り組むためには、健全な生態系が必要です。地球の気温上昇を抑えるために必要な気候変動軽減の37%は、生態系から得られるからです。

ところが、世界の生態系はかつてない脅威にさらされています。「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)」が新たに発表した権威ある、憂慮すべき報告書は、人類史上例を見ない速さで自然界が劣化していることを明らかにしています。1990年以来、森林伐採により、大気中に排出された有害な二酸化炭素の吸収に役立つ2億9千万ヘクタール以上の森林が消えています。100万種の動植物が絶滅の危機に瀕する一方で、減少または乱獲の状態にある海洋漁業資源は全体の90%を超えています。

全世界の人々にとって、その影響は深刻なものとなるでしょう。生物多様性と生態系をめぐる現状の悪い動向が続けば、SDGsのターゲットのうち、80%の達成に向けた前進に支障が生じると見られます。そのような事態を許すことはできません。

今年の国際デーでは、環境軽視が食料の安全保障や公衆衛生に及ぼす影響を取り上げます。世界では今、食料システムの崩壊が進んでいます。数十億人が適切な栄養にアクセスできていません。生産された食料のおよそ3分の1は失われるか、無駄になっています。私たちが食物を育て、加工し、輸送し、消費し、そして廃棄している現状は、生物多様性の喪失の最大の原因となっているだけでなく、気候変動も助長しているのです。

この傾向を逆転させ、本質的な変革を促進するため、早急に行動せねばなりません。解決策はあります。私たちが環境に悪影響を及ぼす実践をやめ、私たちの食料システムを多様化し、より持続可能な生産と消費のパターンを促進すれば、国際保健を改善し、食料の安全保障を改善し、気候変動へのレジリエンスを高めることができるからです。

今年の「国際生物多様性の日」にあたり、私は各国政府、企業、市民社会など、すべての人に対し、かけがえのない地球の脆弱で極めて重要な生命の網を保護し、これを持続可能な形で管理するため、緊急対策を取るよう強く求めます。


■ アントニオ・グテーレス
ポルトガルの政治家。第9代国際連合事務総長。同国の首相や社会主義インターナショナル議長、国連難民高等弁務官(UNHCR)などを歴任。