遠藤潔の活動報告

第十八代 遠藤宗家 遠藤潔

アントニオ・グテーレス 国連事務総長

2020年04月23日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックは健康上の緊急事態です。しかし、それ以上の緊急事態でもあります。これは経済危機、社会的危機、急速に人権上の危機になっている人類の危機です。

今年の2月、私は国連の活動の中心に、人間の尊厳と世界人権宣言の約束を据えた「人権のための行動呼びかけ」を発表しました。その際に述べたように、危機において人権を後回しにしてはなりません。そして私たちは今、数世代にわたる最大の国際的な危機に直面しています。

私は今日、人権がCOVID-19への対応と復興をどう導くことができるのか、また導くべきなのかということについて報告書を発表します。その主張は明確です。人々と人権は、最優先であり中心でなければならないのです。

人権の視点によって、すべての人に目が向けられ、誰一人取り残されないことが確保されます。人権への対応は、あらゆる人の保健医療の確保の要請に注力することで、パンデミックに打ち克つ事ができます。同時に、その対応は重要な警報システムとして機能します。誰が、なぜ、最も苦しんでいるのか、そして何が可能なのかを明確にします。

私たちは人がウイルスに無差別に感染する一方で、ウイルスが及ぼす影響には差が生じることを目の当たりにしています。公共サービスの提供の深刻な脆弱性と、公共サービスへのアクセスを阻害する構造的不平等が表出しています。

私たちは、(COVID-19の)対応において、こうした課題に適切に対処しなければなりません。現在、特定のコミュニティーに対する特に著しい影響、ヘイトスピーチの高まり、脆弱な立場のグループへの攻撃、高圧的な安全対策による医療対応の弱体化のリスクがみられます。

エスノナショナリズム、ポピュリズム、権威主義の高まり、また国によっては人権の後退を背景に、この危機は、パンデミックとは関係のない抑圧的な措置を講じる口実になり得ます。これは受け入れられません。

以前にも増して、各国政府は透明性をもち、迅速に対応し、説明責任を果たさなければなりません。市民空間と報道の自由は極めて重要です。市民社会団体と民間セクターは重要な役割を担います。そして、私たちが決して忘れてはならいことは、脅威はウイルスであり、人ではないということです。

非常事態宣言を含むあらゆる緊急措置は、合法的、均衡的、必要に応じたもので非差別的で、具体的焦点と期間を持ち、公共衛生を保つ最小限の介入手法でなければなりません。最善の対応は、人権と法の支配を守りながら、切迫した脅威に比例した対応を取ることです。将来に目を向けながら、私たちはより良く復興する必要があります。

人権に支えられている持続可能な開発目標(SDGs)は、より包摂的で持続可能な経済と社会にとっての枠組みを提供します。経済社会の権利の強化は、長期にわたって強靭さを高めます。復興はまた、2050年までのカーボンニュートラルを目標とした気候行動と生物多様性の保護を促進し、将来世代の権利を尊重しなければなりません。私たちは皆、同じ仲間なのです。

ウイルスはすべての人の脅威です。人権はすべての人を向上させます。この危機の中で人権を尊重することで、私たちは今日の緊急事態、そして明日の復興に向けた、より効率的で包摂的な解決方法を築きます。


■ アントニオ・グテーレス
ポルトガルの政治家。第9代国際連合事務総長。同国の首相や社会主義インターナショナル議長、国連難民高等弁務官(UNHCR)などを歴任。