遠藤潔の活動報告

第十八代 遠藤宗家 遠藤潔

遠藤潔 第十八代遠藤宗家本邸 書斎の間

2018年09月04日
遠藤潔 第十八代遠藤宗家本邸の書斎の間は、アール・ヌーヴォーを代表するアルフォンス・マリア・ミュシャ画家の原画である四季のうちの『冬』を飾っている。

ミュシャの出世作は1895年、舞台女優サラ・ベルナールの芝居のために作成した『ジスモンダ』 (en:Gismonda) のポスターである。これはベルナールが年の瀬に急遽ポスターを発注することにしたが、主だった画家が休暇でパリにおらず、印刷所で働いてたミュシャに飛び込みで依頼したものだった。

威厳に満ちた人物と、細部にわたる繊細な装飾からなるこの作品は、当時のパリにおいて大好評を博し、文字通り一夜にして彼のアール・ヌーヴォーの旗手としての地位を不動のものとした。

また、サラ・ベルナールにとっても、この『ジスモンダ』が、フランス演劇界の女王として君臨するきっかけとなった。その後、ミュシャは「椿姫」、「メディア」、「ラ・プリュム」、「トスカ」など、サラ・ベルナールのポスターを制作した。

サラ・ベルナールの他、煙草用巻紙(JOB社)、シャンパン(モエ・エ・シャンドン社)、自転車(ウェイバリー自転車)などの多くのポスターの制作をおこなった。これらは女性と様式化された装飾の組み合わせが特徴的である。特に1896年に制作されたJOB社のポスターは大変人気があり、コレクター用に小型判が作られている。

宗教的思想に裏付けられた文学的解釈、それを美へと昇華する芸術力。挿画本分野において、ミュシャは独自の、そして輝かしい業績を残している。アメリカの富豪チャールズ・クレーンから金銭的な援助を受けることに成功し、1910年故国であるチェコに帰国し、20点の絵画から成る連作『スラヴ叙事詩』を制作した。

この一連の作品はスラヴ語派の諸言語を話す人々が古代は統一民族であったという近代の空想「汎スラヴ主義」を基にしたもので、この空想上の民族「スラヴ民族」の想像上の歴史を描いたものである。スメタナの組曲『わが祖国』を聴いたことで、構想を抱いたといわれ、完成までおよそ20年を要した。


■ アルフォンス・マリア・ミュシャ
1860年7月24日 -1939年7月14日。チェコ出身。アール・ヌーヴォーを代表する画家で、多くのポスター、装飾パネル、カレンダー等を制作。ミュシャの作品は星、宝石、花(植物)などの様々な概念を女性の姿を用いて表現するスタイルと、華麗な曲線を多用したデザインが特徴。イラストレーションとデザインの代表作として『ジスモンダ』『黄道十二宮』『4芸術』などが、絵画の代表作として20枚から成る連作『スラヴ叙事詩』が挙げられる。