遠藤潔の活動報告

第十八代 遠藤宗家 遠藤潔

アントニオ・グテーレス 国連事務総長

2020年05月05日
COVID-19の危機は、私たちの社会のあらゆる側面に影響を及ぼし、社会から最も隔絶された人々がどれだけの疎外感を抱いているのかを明らかにしました。私はきょう、COVID-19のパンデミック(世界的大流行)が、全世界で10億人を数える障害者にどのような影響を与えているのかについて、お話ししたいと思います。

障害を持つ人々は平時においてさえ、教育や医療、所得の機会を得られなかったり、コミュニティーに参画できなかったりすることが多くなっています。人道支援を必要とし、不安定な状況では、さらに悪くなります。障害を持つ人々は貧困に陥ることが多いほか、暴力やネグレクト、虐待を受ける確率も高くなっています。

今回のパンデミックは、このような不平等をさらに広げるだけでなく、新たな脅威も作り出しています。私たちはきょう、障害者を包摂した対応と、あらゆる人のための復興を提言する報告書を発表します。障害者は、COVID-19によって最も深刻な影響を受けている人々に含まれます。入手できる公衆衛生情報が不足していたり、基本的な衛生面の対策を講じる際に大きな障壁に直面したり、保健医療施設を利用できなかったりしているからです。

障害を持つ人々がCOVID-19に感染した場合、重症化する可能性は高く、死に至るおそれもあります。障害を持つ高齢者が圧倒的に多く暮らす介護施設では、COVID-19関連の致死率が極めて高く、19%から72%という恐ろしい割合に達することもあります。年齢、または、障害の有無に基づく生活の質や生命の価値の決めつけなど、差別的な基準で医療の配分が決定されている国もあります。この状況を見過ごすことはできません。私たちは障害を持つ人々に、パンデミックの間でも医療や救命措置を利用できる平等な権利を保障しなければなりません。

今回の危機が発生する以前に、雇用からの排除に直面していた障害者は、さらに失職する危険性が高まっているだけでなく、職場に復帰するにあたってもさらに大きな困難に直面することになります。しかし、給付を受けられる重度障害者は28%にすぎず、低所得国に至っては、その割合がわずか1%となっています。特に、女性と女児の障害者は、家庭内暴力に遭うリスクが高く、今回のパンデミックでその件数は急増しています。

私は各国政府に対し、障害を持つ人々をCOVID-19への対応と復興に向けた取り組みの中心に据えるとともに、その意見を聞き、参画を図るよう強く訴えたいと思います。障害を持つ人々は、今多くの人々が直面している孤立した状況や、代替の勤務形態の中でうまくやっていくための貴重な経験を積んでいます。将来に目を向ければ、私たちには、持続可能な開発目標(SDGs)の達成を目指し、より包摂的で多くのものが利用しやすい社会を設計、実現するための絶好の機会が訪れていると言えます。

私は昨年、国連システムがその一翼を担えるよう「国連障害者インクルージョン戦略」を立ち上げました。この戦略は、本格的かつ恒久的な変革を達成するという国連の決意を示すものです。私たちは障害者の権利を確保することで、私たちに共通の未来へと投資しているのです。


■ アントニオ・グテーレス
ポルトガルの政治家。第9代国際連合事務総長。同国の首相や社会主義インターナショナル議長、国連難民高等弁務官(UNHCR)などを歴任。