遠藤潔の活動報告

第十八代 遠藤宗家 遠藤潔

都市化する世界とCOVID-19

2020年07月30日
都市部は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)の中心地であり、報告されている感染者数の90%がそこで発生しています。危機に直面している多くの都市では、医療が逼迫し、水や衛生環境も不十分であるなど、様々な課題を抱えています。こうしたパンデミックのもたらす多くの課題は、特に都市の貧困地域で深刻であり、社会に根深く存在する不平等を浮き彫りにしています。

一方で、人々の強い連帯やレジリエンスも多くの都市で見られています。見知らぬ者同士が互いに助け合い、社会に必要不可欠な業務を担う人々に皆で拍手を送り、また、企業が地元に救命物資を支援するなど多くの例が見られます。

私たちは、人類の精神の一番良いところを目にしてきました。パンデミックに立ち向かい、復興に手を携える中で、コミュニティーやイノベーション、創意工夫の拠点として、都市に期待を寄せています。暮らし方や人とのつながり方、都市の再建の仕方について考え直し、これらを根本的に立て直す機会が訪れています。

このような理由から、私たちは「都市化する世界とCOVID-19に関する政策概要」を発表します。そこには主に3つの提言が盛り込まれています。

第1に、私たちはパンデミックに対応する全段階において、様々な不平等や長期的な開発の不足に適切に対処し、社会の連帯を確保する必要があります。すべての人に安全なシェルターを、家のない人々にとりあえずの住まいを保障することを含め、私たちは都市に暮らす最も脆弱な立場に置かれた人々を優先しなければなりません。水と衛生へのアクセスも欠かせません。

多くの都市では、スラムなどのインフォーマル居住地区における不十分な公共サービスの改善に緊急に取り組むことが必要です。実際、世界の都市人口のほぼ4分の1がスラム地区に居住しています。地方自治体はすでに、この危機の間における立ち退き要求の禁止から、最も脆弱な地域への給水所や手洗い所の設置に至るまで、幅広い対策を実施しています。

第2に、私たちは地方自治体の能力強化に取り組まなければなりません。そのためには、断固とした対策に加え、地方自治体と政府の協力を深化させることが必要です。緊急経済対策やその他の救済策は、適切な対応を支援するとともに、地方自治体の能力を力強く支援していくべきです。

第3に、私たちは環境に配慮したレジリエントで包摂的な経済復興を追求せねばなりません。多くの都市は、自転車専用レーンや歩行者専用区域を新設したり、公共空間を再生したり、都市のモビリティーや安全性、大気の改善に取り組んでいます。

環境に配慮するための転換や雇用創出を緊急経済対策の中心に据えれば、成長を低炭素型のレジリエントな方向へ導き、持続可能な開発目標(SGDs)の達成に向けて歩みを進めることができます。在宅勤務の急速な広がりは、社会が差し迫った脅威に対処するために急速に変容できることを示しています。

私たちは、これと同じ切迫感を持って行動することで、都市を変容させ、気候変動や環境汚染などの危機に果敢に取り組まなければなりません。今こそ都市化する世界を再考し、その姿を変えるべき時です。現在そして将来のパンデミックがもたらす現実に適応していくべき時です。そして今こそ、よりレジリエントで包摂的かつ持続可能な都市をつくることで、より良い復興を成し遂げる機会なのです。


■ アントニオ・グテーレス
ポルトガルの政治家。第9代国際連合事務総長。同国の首相や社会主義インターナショナル議長、国連難民高等弁務官(UNHCR)などを歴任。