遠藤潔の活動報告

第十八代 遠藤宗家 遠藤潔

目黒公郎 東京大学教授

2021年09月01日
都市震災軽減工学、国際防災戦略を専門とする東京大学の目黒公郎教授は、2016年の熊本地震や2018年の北海道胆振東部地震など、震度7クラスの強い地震動を伴う地震が頻発していることや大雨による土砂災害や洪水災害について「地球の平均温度が上がることで、気象現象の“振れ幅”が大きくなる。2018年も西日本豪雨で大きな被害が出ましたが、48時間で400~500ミリ超といった大量の雨が頻繁に降るような事態はこれまであまり例がありません」と述べた。

目黒教授は、企業が災害対策を適切に立案、実行するには「災害イマジネーション」が不可欠だと指摘した。災害イマジネーションとは「対象地域の特徴と発災時の条件を踏まえた上で、発災からの時間経過にともなう災害状況を適切に想像できる力」であるとしたうえで「特に、災害に責任を持って対応すべき立場にある人には、高い災害イマジネーションが求められる」とした。この想像力がないがために、良かれと思って立案した災害対策や制度がまったく効果を発揮しなかったり、むしろマイナスの効果を持ったりする場合があるという。

政府中央防災会議は、首都直下型地震と東海・東南海・南海地震によって、全壊・全焼建物が約200万棟、経済損失が200兆円規模の被害を想定している。直後のガレキ処理から復旧・復興を担うのは建設業の人たちだが、近年の建設業の市場縮小とともに、就労人口は減少、大規模プロジェクトの豊富な経験とスキルの高い団塊世代も引退している。数が縮小し、質も低下している状況下で、この規模の災害からのスムーズな復旧や復興は労働力の点からも非常に難しい。

目黒教授は「地域特性は、地質や気候、地形といった自然条件で決まる自然環境特性と、人口分布/密度やインフラの特徴、政治、経済、文化、法制度など、人間依存の条件である社会環境特性から構成されます。この両者でその地域の人々の生活スタイルが決定します。これに季節や曜日、時間帯といった時間的条件を踏まえた上で、発災からの時間経過とともに、何が起こるかを想像できなければなりません」と語った。


■目黒公郎
東京大学生産技術研究所教授、都市基盤安全工学国際研究センター長。86年武蔵工業大学(現・東京都市大学)工学部卒業、88年東京大学大学院工学系研究科修士課程修了、91年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了、東京大学生産技術研究所助手、95年東京大学生産技術研究所助教授、04年東京大学生産技術研究所教授、06年東京工業大学特任教授(兼務)、07年東京大学生産技術研究所都市基盤安全工学国際研究センター長、08年放送大学客員教授(兼任)、10年東京大学大学院教授(兼務、情報学環総合防災情報研究センター)、15年日本地震工学会会長、18年地域安全学会会長。