遠藤潔の活動報告

第十八代 遠藤宗家 遠藤潔

アントニオ・グテーレス 国連事務総長

2022年03月01日
私はこれまで多くの科学の報告書を目にしてきましたが、このようなものは初めてです。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が本日発表した報告書は、人類の苦難の縮図であり、気候に関するリーダーシップの失敗を訴える痛烈な告発状です。この報告書はいくつもの事実を積み上げ、人類と地球が気候変動によって容赦なく打撃を受けていることを明らかにしています。

今、人類の半数近くが危険地域で暮らしています。今、多くの生態系が取り返しのつかない局面にきています。今、炭素による汚染が放置されていることで、世界で最も脆弱な立場に置かれた人々が破滅への道を無理やり歩かされています。

これらの事実は、否定できません。こうした指導力の放棄は、犯罪的です。世界の最大規模の汚染を引き起こしている者は、罪深くも私たちの唯一の住処に火を放っています。世界の気温上昇を1.5℃に抑えることが不可欠です。

それには、世界が排出量を2030年までに45%削減し、2050年までに排出量正味ゼロを達成する必要があると、科学は示しています。しかしながら、現時点でのコミットメントでは、世界の排出量が2030年までに14%近く増加することになります。これは、壊滅を意味します。1.5℃を守る、いかなる機会をも潰してしまいます。

本日の報告書は、2つの中核的な真実を強調しています。第一に、石炭やその他の化石燃料は、人類を窒息させようとしています。すべてのG20諸国の政府が、国外の石炭火力発電事業への資金提供を停止することに同意しました。次は、直ちに国内でも同じ措置を講じ、石炭火力発電所を解体しなければなりません。石炭火力発電事業に未だに融資している民間セクターの資金提供者は、責任を問われなければなりません。巨大な石油ガス企業とその出資者も、警告の対象です。

自社の計画や事業が2050年の排出量正味ゼロ目標を弱体化させ、2030年までに起こらなければならない大きな排出削減を無視しているにも関わらず、グリーンだと言うことはできません。人々は、この煙幕を見透かしています。経済協力開発機構(OECD)加盟国は2030年までに、そしてすべての非加盟国は2040年までに、石炭火力発電を段階的に廃止しなければなりません。現在の世界のエネルギーミックスは、破綻しています。

現在の出来事からあまりにも明らかなように、化石燃料に頼り続けていると、世界の経済とエネルギー安全保障を地政学的な衝撃と危機に対して脆弱にさせます。世界経済の脱炭素化を遅延するのではなく、今こそ再生可能エネルギーの未来にむけてエネルギーの移行を加速させるときです。化石燃料は、私たちの地球、人類、そしてそう、経済にとっても袋小路です。再生可能エネルギーに迅速に適切に管理しながら移行することが、世界が必要とするエネルギー安全保障、普遍的なアクセス、グリーン・ジョブに通じる唯一の道です。

私は、先進国、国際開発金融機関、民間投資家らが連帯し、主な新興経済国が石炭の使用を終えるよう支援することを呼びかけます。こうした的を絞った支援メカニズムは、既存の持続可能な開発ニーズを上回るものです。この報告書の第二の中核的な報告結果はほんの少し良いもので、適応事業への投資は効果があるということです。

適応は命を救います。気候による影響が悪化し、今後さらに進んでしまいますが、投資の拡大が生存のために不可欠になります。気候変動への適応とその緩和は、同等の力と緊急性をもって追求されなければなりません。すべての気候変動対策資金の50%を適応に振り向けることを私が推進してきた理由は、ここにあります。適応資金に関するグラスゴーでのコミットメントは、気候危機の最前線にある国々が直面している課題に対処するには、明らかに不十分です。

私はまた、小島嶼国と後発開発途上国が命と生活を守るために必死に求めている資金への障壁を取り除くことも推し進めています。私たちは、この新たな現実に対処するために、新たな適格性の制度を必要としています。遅れは、死を意味します。気候変動との闘いに解決策で打ち克とうとする最前線のすべての人々から、私はインスピレーションを受けています。

多国間、地域、国レベルのすべての開発銀行は、何をすべきか分かっています。すなわち政府と協力して引き受け可能な適応プロジェクトを供給するよう設計し、政府が公的・民間資金を見つけることを支援することです。そして、あらゆる国はグラスゴーでの誓約を守り、1.5℃目標と一致するようになるまで、毎年、自国の気候計画を強化しなければなりません。G20は先導しなければなりません。さもなければ、人類はさらに悲劇的な代償を払うことになるでしょう。

私は、あらゆる場所で人々が憂慮し、怒りを抱いていることを知っています。私もそうです。今こそ、怒りを行動へと変えるときです。あらゆるわずかな温度の変動が影響をもたらします。あらゆる声が変化をもたらします。そして、1秒1秒が意味を持つのです。


■ アントニオ・グテーレス
ポルトガルの政治家。第9代国際連合事務総長。同国の首相や社会主義インターナショナル議長、国連難民高等弁務官(UNHCR)等を歴任。96年ブラジル南十字星勲章大十字、97年ポーランド共和国功労勲章大十字、98年ウルグアイ東方共和国勲章大将校、99年メキシコアステカの鷲勲章特別懸章、00年ベルギーレオポルド勲章大綬章、スペインカルロス3世勲章大十字、ギリシャ名誉勲章大十字、01年イタリア共和国功労勲章大十字、01年チリ功労勲章大十字、カーボベルデアミルカル・カブラル勲章1級、16年ポルトガル自由勲章大十字、02年スペインイザベラ・カトリック女王勲章頸飾、ポルトガルキリスト勲章大十字、フランス国家功労勲章大十字、ポルトガル南十字星勲章大頸飾、日本旭日大綬章、チュニジア共和国勲章大綬章、イタリアヤロスラフ賢公勲章1等等を受章。