遠藤潔の活動報告

第十八代 遠藤宗家 遠藤潔

田中正之 国立西洋美術館館長

2023年06月16日
国立西洋美術館や武蔵野美術大学で様々な展覧会を企画してきた国立西洋美術館の田中正之館長は「展覧会では来館者の参加、主体的な関わりを重視したい。展示された作品を見るだけなく、空間の雰囲気やレストランやショップも含めて、どんな体験をする場にできるのか、その充実度が重要である」と述べた。

フランスの名建築家、ル・コルビュジエが設計した17の建築物が、2016年7月、世界遺産に登録された。名だたる17の建築物には、東京・上野にある国立西洋美術館も名を連ねている。国立西洋美術館は、コルビュジエが設計した日本唯一の建物である。

国立西洋美術館がオープンしたのは1959年6月、戦後14年目のことだ。戦時中にフランス政府に没収された実業家・松方幸次郎の西洋画コレクションの返還寄贈が決まったことを受け、日仏国交回復の象徴として新美術館の建設が決まり、その設計者にコルビュジエが選ばれたのだ。すでにコルビュジエは、17階建ての高層アパート『ユニテ・ダビタシオン』や20世紀の最高傑作とも呼ばれる『ロンシャンの礼拝堂』で名をはせた人物だった。

田中正之館長は「美術館は学術研究機関であり、教育普及機関であり、また経営という側面も考えなければならず、この3つを鼎立させなくてはいけない。この鼎立のためにも、学術研究や教育普及の知識がある人が美術館を経営、運営していくことが必要である」と指摘した。展覧会が商業主義的なものにならないようにするため「つねに調査研究に基づいた、意味のある展覧会をやっていかなければいけません。こうした活動を支えるためにも、専門職館長は重要である」と語った。

2022年4月9日、約1年間の休館を経てリニューアルオープンした国立西洋美術館は、新型コロナウイルス感染症による感染予防対策の空調工事、展示物・収蔵品の保管体制強化と建築物における衛生的環境の確保に関する法律に基づく改修工事、ル・コルビュジエが構想した創建当時の姿に近づける整備を実施した。


■ 田中正之
63年東京生まれ。90年東京大学大学院人文科学研究科修士課程美術史学専攻修了、ニューヨーク大学大学院美術史研究所入所、96年国立西洋美術館研究員、「マティス展」(04)、「ムンク展」(07)などを担当。07年武蔵野美術大学造形学部准教授、09年教授。11年同大学美術館・図書館館長、造形研究センター長、21年4月国立西洋美術館館長。主著に『近代の都市と芸術7 ニューヨーク―錯乱する都市の夢と現実』(竹林舎、16年)、『現代アート10講』(武蔵野美術大学出版局、17年)など。