遠藤潔の活動報告

第十八代 遠藤宗家 遠藤潔

潘基文 国連事務総長

2016年12月01日
エイズの出現から35年を経た現在、国際社会は誇りをもって過去を振り返ることができます。しかし、私たちは将来に向かい、2030年までにエイズの蔓延に終止符を打つという目標の達成も、決意をもってしっかりと見据えなければなりません。

この病気への対策には、実質的な前進が見られています。治療を受ける人々もこれまでになく増えました。2010年以来、母子感染によりエイズにかかった子どもの数は半減しています。毎年、エイズ関連の原因で死亡する人々の数も減っています。また、HIV感染者の寿命も延びています。

命を救う医薬品を利用できる人々の数は、過去5年間で倍増し、現在は1,800万人を超えています。適切な投資を行えば、世界は2030年までに治療者数3,000万人という私たちの目標を前倒しで達成できます。母子感染を防ぐHIV治療薬も現在、必要とする人々の75%以上に届いています。

明らかな前進は見られるものの、成果はまだ不安定な状態です。サハラ以南アフリカをはじめ、HIV感染率の高い国々では、若い女性が特に弱い立場にあります。HIV感染の流行を左右する上で重要な集団は、引き続き極めて高いレベルでHIVに感染しています。注射による薬物使用者や男性の同性愛者など、同性と性交渉を持つ男性の間では、新規感染が増大しています。東欧と中央アジアでは、烙印や差別、懲罰的な法律により、エイズの蔓延がさらに広がっています。世界的に見ても、経済的に不利な立場にある人々は、サービスやケアを利用できないでいます。犯罪化や差別は毎日、新たな感染を招いています。女性と女児は依然として、特に大きな影響を受けています。

「持続可能な開発のための2030アジェンダ」は、誰も置き去りにしないという約束のもとに採択されました。この約束はエイズ対策にとって最も重要です。若年層や社会的弱者、社会から隔絶された人々を支援すれば、今後の方向性は大きく変わることでしょう。国連合同エイズ計画(UNAIDS)の戦略枠組みは、持続可能な開発目標(SDGs)に沿い、HIV対策が教育や平和、ジェンダーの平等、人権の前進と結び付くことを強調しています。私は、国連とミシェル・シディベ事務局長が率いるUNAIDSが、エイズ蔓延に終止符を打つための新しい、よりよいアプローチの発掘に努めていることを誇りに思います。

エイズ蔓延当初の10年間、罹患した人々の集団は、エイズ対応の無策やずさんさ、不備を受け入れませんでした。その勇気が、女性と子どもの健康確保、救命医薬品のコスト低下、そして声なき人々の発言力獲得を前進させる原動力となったのです。私たち全員が、これと同じ不屈の精神のもとに結束しなければなりません。私は「世界エイズ・デー」にあたり、この大義を推進するため、不断の努力を続けるリーダーや市民社会、そして国連と民間セクターの仲間たちに敬意を表します。

事務総長としての任期満了を目前に控え、私はすべての人々に対し、エイズのない世界という私たちのビジョンの実現に向け、ともに決意を新たにするよう、強く呼びかけたいと思います。


■ 潘基文
第8代国際連合事務総長。大韓民国出身。第33代大韓民国外交通商部長官。第11回ソウル平和賞受賞。